2015年3月14日土曜日

ニューヨークはあたたかい

今週に入り、ようやく少しずつあたたかくなってきました。
3℃、4℃、日本なら真冬の寒さでも−10℃前後の寒さに慣れた体には、
既にあたたかい。春の訪れを感じるようになりました。

さて、これまでなにかにつけてニューヨークで暮らすのって大変。
ってなことばかり書いてきましたが、もちろんそんなことばかりでは
ありません。

これっていいな、って思うこと、あたたかい気持ちになること、
日々の些細な出来事の中にいろいろあります。

まず思うのは、
子供に優しいニューヨーカーのなんて多いこと!

ハワイやグアムなどで、ホテルのスタッフやレストランの店員さんが
顔中にっこにこの満面の笑みで

「Hi! Little Baby!」

と声をかけてくれるのは嬉しいけど、それはそこが観光地だから、
私たちがお客さんだからだと、心のどこかで思っていました。

でも、ハワイでもなく、観光地でもない、
クールで都会的な人たちというイメージのあった
ニューヨークの人々が、娘と私にこんなにも優しく接してくれることに、
来た当初は嬉しい驚きと戸惑いを覚えました。

特にベビーカーにまつわるエピソードは山の数ほどあります。

例えば、ドアオープン。
お店に入る時、地下鉄の駅に入る時、
ドアの前にベビーカーを止めて、
ドアノブに手をかけたあたりでどこからともなく

「I got it 」

という声が聞こえてくるのです。

すると自動ドアのようにすっとドアが開いて、
私たちが中に入るまで彼ら、彼女らはドアを開けて
持っていてくれたります。

ちょっと、ちょっと、かっこいいじゃないの!

日本じゃ、レディーファーストとか言ってデート中の男子に
たまにやってもらった経験しかありませんでした。

ここじゃ、男性だけでなく、女性も、若者も、お年寄りも、
ホームレスような人にも・・・
これまで本当に色んな方にこの
ドアオープンのご親切をしていただきました。

その素早さったら!
どこからともなくさっと現れて、さっと去っていく・・・

彼らは別にその店に入ろうとしているわけでも、
地下鉄に乗ろうとしているわけでもなく、ただただ、
ドアの前で立ち止まっている東洋人の親子連れを見て、
わざわざ止まってくれる単なる通行人だったりするわけです。

そこに驚きます。
誰かのためにドアを開けてあげるためだけに
立ち止まれるか?

日本なら”おもてなし”とか”サービス業”という役割や責任を
与えられたら俄然実力を発揮する人が多いと思うのですが、
ここではなんかそれとは違うのです。

逆に、そんな親切なニューヨークの人々なのに接客などの
仕事となるとその対応の悪さにがっかりすることの方が多い。

食事をして、お金払って、チップまであげてるのにこんな
対応しかできないの?!
と、日本の高レベルの接客に甘やかされている私たちにはどうしても
理解できないような経験も度々です。

うーん、なんとも不思議です。

またある時は、”神の声”が聞こえることもあります。

エレベーターのない駅が多いマンハッタンの地下鉄、
どうしても階段を使わなければ上り下りできないことが多々あります。

子供が歩ける時はラッキー。
なんとか歩かせながら階段を上り下りすればいいけれど、
寝てしまった時などは最悪です。

片手に娘を抱きかかえ、荷物の入った大きなバッグを肩かけして
ベビーカーをたたんで持ち上げて「さあ、いくぞ!」と
戦闘態勢を整えたところで
「大丈夫?手伝おうか?」
と、またどこからともなく声が・・・・

寝込んでさらに重く感じる13キロの娘を抱えた妊婦に
それはもう、ほとんど神の声!

「あー、もうホント助かります。
 ありがとうございますっっ!!!!(あなたは神さまです)」

と最大の笑顔で御礼を言って厚意に甘えさせて頂きます。

別れ際にはにっこり笑って

「Have a nice day!」とか言って去っていくその人。

いいな、かっこいいな。ああいう人に私もなりたい!
毎回心に誓うのでした。
男性が赤ちゃん連れのお母さんに声をかけて手伝っていました。
地下鉄の階段ではこんな光景を日常的に見かけます。
もちろんバスや電車に乗り込んだ瞬間には、
娘にさっと席を譲ってくれる人がほとんどです。
混んだ車内で誰も立ち上がらないと、隣に立っている人が
「ちょっと、あなた、この子に席を譲ってあげて」
と言ってくれたりすることも。

とはいえ、甘えてばかりもいられません。
私たちもラッシュアワーを避ける努力もするし、
ベビーカーをたためるときは極力たたみますが、
やはり子供が寝てしまった時や荷物をたくさん積んでいる時には
「みなさん、ごめんなさい・・・」
と思いつつドキドキしながら、エイやっとそのまま乗り込みます。

こういう時、日本なら「ちっ!」と舌打ちする人や嫌な顔をする人が
いてもおかしくないし、それもわかります。

ニューヨークの人々の中にも快く思っていない人も、
もちろんたくさんいるでしょうし、子供が好きじゃない人も
大勢いるでしょう。

一度やむをえずラッシュアワーとぶつかってしまった時
「ちょっと、つめてよ!」と誰かがドア付近で叫んだ時に、
隣のおばちゃんが、
「ここにベビーカーがあるの!わかんないわけ?!」
と返してくれました。
「ごめん、ごめん、見えなかったから」
というやりとりがあっておしまい。
さっぱりしています。

もしこれが日本で都内の満員電車ならこういう時、
どうなるのでしょうか。

周りの人たちは、無言でスマホをいじりながらあからさまに
厳しい視線を向けたりするのかも。。。

「空気よめよー。何考えてんの?
 こんな時間にベビーカーで乗るなんて非常識。」

という、無言の糾弾を受け、拷問のような数十分を
過ごすのでしょうか・・・
小心の私なら耐えきれなくて、逃げるように途中で
降りてタクシーに乗ってしまうかもしれません。 

逆に、こちらではそういう非言語のコミュニケーションが
愉しいことがあります。

ショップの店員さん、歩いていてすれ違う人たちが娘を見て
にこっとしてくれたり。

最初はうちの子なんかヘン顔でもしてた?

と思いましたが、単に子供を見て「可愛い」と微笑んでくれる人
たちが多いことに気付きました。

そこで私もにこっと返す。

こういうのってすごくいいなー

ただ、それだけのやりとりですが毎回思います。


殊更にうちの子が可愛い、ということではなく、
小さな子供を見ると、自然とそういう反応をしてしまう
大人が多い、そういうことなんだと思います。

社会が子供に対して優しいってこういうことかな。
とも思う。

子供は母親だけからではなく、こういう見ず知らずの
誰かからも笑顔というかたちの愛情を受けて大きくなっていく。
とっても幸せなことです。

娘にはおおいに勘違いしてもらって結構!
日本で足りない、足りないと言われている子供の自己肯定感も、アメリカではこんなかたちでも育まれているのかもしれません。

微笑んでくれたり、話しかけてくれたりするのは、
おばちゃんだけじゃありません。
若いお姉さんもお兄さんも、おじさんも
子供をよく見ている人が多いことに驚きます。

他人に無関心な人が多いのかと思っていた大都会のマンハッタンで、
人々の周囲へのアンテナやアテンションの高いことに、ただただ
驚くばかりです。

私もただぼーっと歩くのをやめて、困っていそうな人が
いたら、少しでも日ごろのお返しをしよう。

そういう気持ちにさせてくれるニューヨークの街。
こういうあたたかい気持ちは人から人へ伝播して、伝染すること。

ここの人たちに教えていただきました。

もうすぐニューヨークに暮らして1年になります。
街の人たちのご厚意を当たり前に思うことなく、
何年経っても感謝の気持ちを忘れませんように!
ここに留めておきます。